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スケートは庶民の文化?ですよ

Posted on: 2009年10月29日

 人間の文化はその人の属する階層によって変化します。階層と言っても複雑にして難解ですが、しかし確実に存在するものです。最も分かりやすい尺度は年収でしょうか。いわゆる平均年収の2倍とか5倍とか、そういう人たちは確実に存在するし、そういう人が普段の買い物をする特殊な市場も、しっかりあります。これまでの好景気は、そういう人達を少しずつ増産して、経済のけん引役に仕立て上げてきました。モノの平均価格が少しずつ上昇すれば、それを作る市場が活性化し、そこに従事する人が潤います。年収300万円程度の人が500万になリ、階層がシフトする訳です。
 って、何の話かと思われるでしょうが、スケートという文化もそうした階層の影響を受けながら成長してきました。特に、フィギュアとそれ以外は、明確に線引きの出来る階層の違いによって分けられ、それぞれが独自に進化してきました。スピードスケートは個人競技ですが、競争原理が最大要素となります。ホッケーは団体競技となリ、裾野でいえばこちらの方が広い階層という事になります。フィギュアは間違いなく、セレブのたしなみであり、それ以外の何物でもありません。ここに競争原理を持ち込んだのは、フランス革命以後の時代の変遷でしょう。そもそもセレブのたしなみを競技として争わせるわけですから、実際ややこしいものです。スピードスケートもホッケーも、その点に於いては明確にして考えるまでもないですから、ここでは割愛。
 
 フィギュアの発展には、2つの要素がありました。一つはその名の由来にもなっている、図形的要素。氷の上に、色々な図形を描いていくこともを目的としたもの。ここには、競技という要素もあります。これはイギリスの有閑身分の人達によって作られ、発展します。サークル・エイト・サーペンタインといった基本的な図形を描き、その技術面での正確さを競うものでした。これはイギリス貴族の文化を如実に体現していて興味深いのですが、彼らは優雅な滑りより幾何学的な解釈でフィギュアを進化させました。いわゆる様式美ですね。当時の貴族を楽しませるものは、高度な学術的ベースを必要としていました。例えば音楽はバッハの数学的な解釈が、その後の大発展の礎になりました。絵画も立体的な作図に遠近法などの数学的解釈が必須でした。それまで感覚的に表現されていたものの多くが、学術的に解明されて発展する中で、フィギュアもまた、学術的な理論を基礎に解釈しようという試みで発展したわけです。それが、コンパルソリーとなって今に伝わっています。
 彼らは、踊りといえば社交ダンスであって、バレエではありませんでした。それは、民族の違いによるものもありますが、少なくともイギリスは本場ではなく、イタリアやフランスの独壇場でしたから、彼らの手によって発展する可能性は低かったでしょう。その為、フィギュアのもう一つの要素については、イギリスでは大きく発展することがなかったのです。
 もう一つは、芸術的要素。イギリスの潮流に於いても、1650年頃にはダッチ・ロールが紹介されたとあります。1772年に世界で初めて、ロバート・ジョーンズによるスケートの指導書が出版されました。それには既に、スパイラルやイーグルの記載があったようです。画期的だったのは、スリーターンですね。「片足によるハートの形」と書かれたそれが、その後のコンパルソリーやフリースタイルへの発展の第一歩となったことは間違いありません。そして1863年、ニューヨークのジャクソン・ヘインズがウィーンに渡り、ロシアンバレエを取り入れて大発展を遂げます。この辺りはもう皆さんもご存知でしょう。
 イギリス生まれのコンパルソリーは、その貴族文化の没落に伴い、停滞します。しかし、職人気質のイギリス人職人が産業革命を経て、フィギュアのブレード制作に傾倒し始めた事も窺えます。ジョン・ウィルソンやミッチェル・キングもまた、そんな職人気質だったのでしょう。当然フィギュアに造詣が深くなければ作れませんから、身分は高かったのかも知れません。
 ジャクソン・ヘインズの最大の功績は、貴族文化に過ぎなかったコンパルソリー・フィギュアを、大衆文化として広めた事にあるかと思います。ともすれば、イギリス貴族の没落と共に、フィギュアスケートは無くなっていた可能性もあります。事実、コンパルソリーは競技としてはほぼ無くなりました。しかし、コンパルソリーという基礎があったからこそ、バレエの技術を柔軟に取り入れることが出来たともいえます。片足滑走を基本とする高度なターンの技術が、フリースタイルの要である事は言うまでもありません。そして、その頃にトゥピックが付けられ、ジャンプが可能となリます。
 
 フィギュアが一般階層にも浸透するには、何より靴とブレードの普及が肝要です。産業革命による量産がフィギュアを広めるために必要だった事も否めません。皮肉にもそれは、貴族社会の衰退をも招きます。もしそうでなければ、フィギュアスケートが世界に広まる事も無かったかも知れませんし、貴族のたしなみとして図形を描くだけの技術に終始してしまった可能性もあります。
 
 私としては、様式美は大好きなので、下手ながらコンパルソリーも良くやります。それ以前に、貴族文化のエッセンスとして、高度な技の追及はコンパルソリーにこそ雅を感じます。形骸化したとはいえ、基礎の練習には今でも重要視されています。単なる基礎練習と考えず、雅な貴族文化を感じながら取り組めば、ちょっと面白いかも?などと考える訳です。
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