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道を誤った?ですよ

Posted on: 2010年6月11日

 随分若い頃ですが、SF小説を書こうと思い立って、その手の本を数冊読んで唖然とした事があります。映画原作だったそれらの本の、リアリティの無さに愕然としました。映画にもなっているので、想像力が追いつかないわけではありません。どうにも、持ち前の知識がリアリズムを悉く壊してしまうのです。中途半端にかじった、例えば「四次元の世界」とか「相対性理論」とか、亡き父と弾ませた科学的な会話の数々。純粋に作品を楽しみたいという、極ありふれた感情と裏腹に、そんなのありえない、単なる作り話か嘘っぱちか、そうした覚めた目で作品を眺める、心の中のもう一人の自分。そんな傾向が、SF離れと科学への興味を後押しし、また歴史ドキュメンタリーなど「事実」に傾倒する方向性を根付かせました。それが良かったのか、悪かったのか、何とも申しようがありませんが、少なくとも近未来への希望や期待より、過去の教訓や美談にこそ私の求めるものがありました。いつしかすっかり、SF小説を書こうという欲は一切無くなり、その目は過去へ過去へと向けられていきました。
 
 そもそも、小説家ほど嘘つきな存在もないでしょう。どの面下げて、恥も外聞も無い、ありもしない出来事をあたかも本当に在ったが如く、言葉を綴れるのか。私も決して善人ではありません。むしろ悪人。しかし悪人だからこそ、嘘はつけなかったのでしょう。悪人は生来、自分自身を偽らざるを得ません。それ故に、自ら生み出すものや、言葉の端々にこそ信頼性を求めていたのかも知れません。小説家を営む知人には、随分と騙されました。なるほど、生来嘘つきであれば、いかなる読者も騙される。言葉が生み出す仮想現実に傾倒させられる。皮肉にも、散々その嘘で私を振り回した知人は、小説家として成功しています。最も適職だった、とも言えるでしょう。残念ながら、悪人の私は、友人を蔑ろには出来なった。悪人正機、つまりは仁義といったものでしょうか。自分を偽らざるを得ないからこそ、もっとも身近で親しい人にこそ、嘘をつけませんでした。これは、自分の甘さなのか、何なのか。それはまだ、わかりません。
 
 元々のアーティスト傾向を、そうしたリアリズムへと方向をシフトさせた私は、その矛先が定まらなくなります。リアリティを求めていけば、結局真実や実態に肉薄したものとなります。おのずから形を成さないと、満足しなくなります。音楽や絵画など、抽象であってもそこに実体が伴うものを求めるようになります。つまりは、現実の伴わない言葉による空絵事を極端に嫌い、自分の表現手法をより真実に肉薄したものを、求めるようになったわけです。以来、近未来小説や、SF映画から、完全に遠ざかりました。そういう意味では、ゲームなども一歩引いて構えているのも事実です。「現実」というリアリティを持ち込めないと、面白くも何とも無いと思っています。ネットで他人とのつながりを保てなかったら、早々に辞めていたでしょう。所詮は、ゲームです。
 
 今思えば、随分と面倒な性格に陥ってしまったと、後悔しています。何せあらゆる事に於いて、中途半端である事を嫌うようになってしまいました。完璧主義というほどではないにしても、実に面倒です。少なくとも、自分の行為で他人を騙すような事だけはしたくない。そんな思いが、自分の作り出すものの信頼性を高める礎にもなっていて、そこにこそ生来の糧が在ったとも気づかされましたが、そもそも悪人正機ですから、常に自分自身の殻を、どんなに小さくとも抱えている真実を、打ち破れないのも確かです。
 
 人の道とは、或いは心とは、難しいものです。そして、それを表現する事も。その真実をさらけ出し、形にしてきたのは、そんな嘘に対するアンチテーゼだったということ。長い間闇雲に捜し求めてきた真実こそ、それだったのかも知れません。それを悟り、自分が少し怖くなりながらも、同時に少しほっとしています。ここに書いている文字が、嘘偽り無い真実を語っているから。少なくとも、空絵事ではないと。
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