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このCDを聴きましょうですよ

Posted on: 2010年8月21日

 フィギュアスケートで、絶対滑ってみたい曲でもあり、多分私の棺に入れてもらうCDの一枚です。ご紹介しましょう。
 
 
 クラシックギターのジョン・ウィリアムスによる逸品。曲は、リチャード・ハーヴェイ作曲の「古風な協奏曲~ギターと小管弦楽のための~」と、スティーヴ・グレイ作曲の「ギター協奏曲」。それぞれ1995年、1989年の録音ですが、秀逸な録音もさることながら、その演奏技巧、曲、とにかくすばらしいです。ジョンのギター協奏曲は山ほどありますが、この書き下ろし作品は数あるギター協奏曲の中でも、至高のものではないかと、個人的には評価しています。親しみやすい曲調は誰にでも、耳に優しく、時には力強く、ギターの織り成す美しい世界に誘ってくれます。
 
 今回はRハーヴェイの古風な協奏曲について語ります。
 
 このCDを手にしたのは、彼是12年前。ギタリスト、ジョン・ウィリアムスは良く知っていて、このアルバムを手にした時から「きっと深い感動を齎すだろう」という絶対的な予測があって、裏切ることはありませんでした。書き下ろし作品であれば、ジョンの持つテクニックの全てが盛り込まれているだろう事も間違いないですし、書き下ろしという意欲的な姿勢からも熱意は受け取れます。間違いのない選択です。無条件で購入しました。
 
 まず、ギター協奏曲というものを、予め説明しておきましょうか。
 凡そクラシックに於いても、異色の協奏曲といってもいいでしょう。クラシックと呼ばれながらも、オーケストラに含まれない楽器のギター(クラシックギター)。実は、管弦楽との共演が可能なのかという、大問題があるのです。そもそも今の大規模なオーケストラであれば、グランドピアノでなければそれにつりあう音量が出ません。ハープにしても同様ですが、こうした小音量の楽器の場合、そのスタイルは古典的な形式をとります。つまり、大規模なオーケストラでなく、ギリギリの小編成でオーケストラを編成するのです。それでも尚、ギターは音量が小さく、作曲者のみならず演奏者一人一人にも、高度な技術が求められます。可能な限り、小音量でフォルテッシシモを演奏すると言う難題です。さらに、ピアニッシシモを最小音量で正確に奏でる技術も必要です。バイオリンであれば、ミュートが使われるかも知れません。管楽器に至っては、全てがソロ。これも、正確な独奏が出来るレベルでないと勤まりません。しかも、これらも小音量を求められます。
 
 そんな難しい管弦楽を前に、ギターは豪華なバックに負けない音量と正確さを求められます。小さな音も、管弦楽に負けては台無しです。さらに、録音技術も高度です。ギターの音が埋もれないように、また音量を上げすぎてフレットノイズを拾わないようにすることも必要ですし、また打楽器の深いレンジをも回避しなければなりません。とにかく高度な録音で、ミキサーの技量も問われます。演奏会場も、程よいリバーブのかかる広い部屋が必要で、マイクとの距離をうまく調節しながら、かつ音の息がぴたりと合うような指揮者の技術も必須。楽器との距離が遠いですから、その指揮も難しいものとなりましょう。
 
 ギターはそれ一本で、あらゆる音を奏でることが出来る、小さなオーケストラとも喩えられます。弦楽器のように太くて硬い音、フルートのように柔らかい音、ホルンのように重く滑らかな音、ピアノのように速い音、どんな音でも出すことが出来ます。それ故に、とても表現豊かな楽器なのですが、最大の弱点は音量が小さいこと。その為、多人数を集める大演奏会には向きません。後世、アンプやエレキ技術の発展が、極めて多彩で大音量も演奏可能な楽器へと進化させましたが、クラシックギターのやわらかい音色と、多彩な表現力を保つには、やっぱり生のクラシックギターには敵いません。技術のある奏者の手にかかると、その音色の世界の広さに圧倒されます。
 
 そんな難しいギター協奏曲ですが、このCDの録音に関してはまさに絶句。伴奏がとにかく音量を抑えようと必死になっているのも良く分かるのですが、それが実に、際どくも繊細な演奏を実現しています。まるで綱渡りでもしながら演奏するような、スリリングな演奏です。小音量だから、ちょっとでも間違えれば粗がすぐに目立ってしまいます。小編成だから、気も抜けません。フォルテであっても決してギターの音色を殺さず、しかし素早く力強い。そしてピアニッシモも何と美しいことか。物凄く綺麗で、繊細で、きらびやかなのに、そこに物凄く張り詰めた空気感があって、譜めくりのわずかなノイズも許されない緊張感の中に、そんな束縛から全てを解放してくれるような、涙が出そうになるほどのやさしい音のハーモニー。まるで母の手に抱かれる子供のように、聴き入ってしまいます。圧巻は、第3楽章「Cantilena」。リチャード本人の解説にはこうあります。
 
 Cantilena―――紗のヴェールのかげで踊られているバレエにも似て、夢みるように抒情的なひとこまである。木管、弦の流れるように歌うソロが、この最も長い楽章に、カンティレーナ(抒情的旋律)の性格を与えている。
 
 すばらしい演奏、すばらしい録音、すばらしいCDです。SBM録音ながら、現在は絶版になっているかと思われます。SACDでの再販を強く希望する名盤です。
 またこのCDは、オーディオの性能も問われます。ギターの演奏に向く小編成のシステムでは管弦楽が厳しいですし、大掛かりなシステムですとギターの繊細な音がどうなるか、という難しいソースでもあります。もちろん普通のミニコンポでも楽しめる高度な録音がされてますが、できればフルコンポで、ギターの音をホンモノのギターの音と同じくらいの音量にして楽しむと、全ての楽器の配置や奥行き、その際どい音量と高度な技術も楽しめます。そこまでリアルな録音です。
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