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自動車の空力特性ですよ

Posted on: 2008年10月9日

 とある知り合いが、自動車の空力特性について、こう語っていました。
 「自動車の空力デザインは根本的に間違っている、あれでは空気抵抗が多すぎる。」というような話をしていました。まあ、云わんとしている事は分かりますけどね。
 
 その人は、航空力学については、それなりの博識だとは分かります。ただ、それをそのまま自動車に持ってくる辺りが、……です。
 ではなぜ、自動車は航空機のようにデザインできないのか? それは、その動力にあります。当然ですが、自動車は動輪を回転させる事によって、前進します。ここで重要なのは、車輪と地面の摩擦を利用しているということです。つまり、浮いてしまっては、前に進めないのです。
 で、かの航空力学を車に持ってきてしまうと、これが大問題になります。車を飛行機のようにデザインしてしまうと、浮かんでしまいます。すると、タイヤが地面と離れます。つまり、浮いた途端に前進力が稼げなくなり、それ以上速度が上がりません。宙に浮いた状態では空気抵抗によって次第に速度も低下し、また地面に降り立ちますが、そこでやっとタイヤが地面を捉え、前進力が回復します。要するに、タイヤで走る以上、自動車は飛んではいけないのです。
 
 かつてのレーシングカーも、航空機のような空力を優先させたデザインを用いていました。空気抵抗値を下げる目的が最優先され、細く長い形状のボディが持て囃されました。しかし、とある時期から、とある発想が生まれます。空気抗力(空気抵抗値=Cd値)をゼロにするのは不可能。なら、それを逆に生かす方法はないか? 飛行機は揚力を使って浮き上がります。自動車は、旋回性能を高める目的で、重心をより低くしたりします。飛行機とは逆の発想で、地面に強く押さえつける力を生み出せば、旋回性能が向上するのではないか??? まさにコロンブスの卵です。
 
 それまで、細く長い棒状のボディだったフォーミュラーカーに、飛行機のような羽根が付けられました。今でも、文字通りウイングと呼ばれるそれは、車体の前方と後方に取り付けられ、一見してすぐわかりますが、飛行機の羽根とは全く逆、裏返しに取り付けられています。そう、空に飛ばないように(笑)、地面に押さえつける為の羽根なのです。これにより、コーナリングスピードが一気に向上。空気抵抗値と重量は増えましたが、旋回性能の向上によって、余りある効果をもたらしたのです。
 
 現在では、コーナリングとは無関係のドラッグレースなどでも、ウイングの付いた車を見かけます。速度が飛行機に近づけば近づくほど、何らかの拍子で宙に浮いてしまった場合の、速度の損失が多くなるからです。タイヤとの接地性を向上させる目的が、空気抵抗値の良し悪しよりも重要だという事でもあります。とはいえ、やはり羽根が最も効果的となるのは、高速コーナーでしょう。高速なカーブでの安定性を確保する為に、現在では必須のアイテムとなっています。
 
 さて、こんなものが市販車に必要か?という愚問をあえて…。羽根が効果を生み出すのは、当然高速域です。時速にして200km/h以上でしょう。そんな速度で走れる公道は、ドイツにしかありません。それも、高速道路であればカーブも殆どありませんし、あるとすれば速度制限も伴います。F-1で走るならともかく、市販車が公道を走る分には、羽根なんて不要です。空気抵抗値なんかより、重量増による加減速性能の悪化のほうが、大きな要素です。但し、市販車でもサーキットを走るとか、ラリーに出場するとかであれば、充分な速度で効果的なダウンフォースが得られるはずです。なので、それらの車やそのレプリカには、付いてますね。
 
 しかしながら、空気抵抗値そのものは、市販車でも重要な要素だったりします。高速道路でも100km/hは出ます。そんな速度で空を飛ぶ事はありませんが、空気という流体の中を掻き分けて走っていることには違いありません。一般的な自動車の場合、空気抵抗値は速度の二乗に比例すると言われています(根拠は知りませんが…空気抵抗=Cd値×空気の密度×前面投影面積×速度の2乗だそうです)。速度を出せば出すほど抵抗が増えます。流線型・流面構成で、空気とぶつかる面積が小さければ小さいほど、燃費が良くなります。羽根に効果がないとすれば、この点では間違いなく不利。なので、Cd値の低い車は、高速での燃費が良いです。ルーフボックスをつけると、高速燃費が確実に悪くなります。ドアミラーを畳んでおけば、前方投影面積が減りますので、燃費が良くなります(推奨はしませんが、ルームミラーのみ使い車線変更は絶対しないという条件付で、私はたまにやります)。
 
 ちなみに、高速道路での最も低燃費な速度というのは、車によって全く異なります。空気抵抗値だけでは単純に語れません。愛車のSVXの場合、Cd値が0.29(市販車最高クラス)ですので、速度の上昇による空気抵抗はかなり低いです。燃料消費率の優れた回転数は3500rpmあたりで、4速ロックアップですと時速にして150km/hを超えるかと思われます。ファイナルのギア比も低めで、つくづく高速クルージングに向いた作りになっています。高速道路で高速走行をした結果、燃費が極端に悪化したという経験は、全くありません。どんな走り方をしても、高速道路なら満タンで一般道の1.4倍~2倍の距離を稼げます。重たい車ですから、一般道のストップ&ゴーのほうが、環境によろしくないようです。

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 岐神葵のぼうけんのしょ。

 岐神葵のブログらしいです。
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