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連載企画 富士山頂を目指そう!Vol.8ですよ

Posted on: 2013年4月26日

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最近の登山スタイル(C)Foxfire

 今回はトレッキングポールです。ステッキ/ストックなどとも呼ばれます。
 トレッキングポールは、いわゆるお年寄りや体の不自由な人が使う杖とは、意義が全く異なります。何度もお話している通り、登山では状況の変化が著しく、そうした過酷な状況を少しでも安全に、快適にクリアするためのアイテムです。単なる、転ばぬ先の杖ではありません。第三第四の足となり、疲労を軽減するだけでなく、悪路での事故を未然に防ぐ心強い道具でもあります。また、万が一骨折した際などに添え木として用いたり、簡易テントの支柱や遭難時にレインウェアなどの上着を縛って旗にしたり、といった特殊な用い方も決して無い話ではありません。カメラの一脚として使えるオプションなどもあります。

 トレッキングポールには、通常1本で用いるT字グリップタイプと、2本ペアで用いるI字グリップタイプがあります。俗称では、T字をステッキ、I字をストックなどと呼び分けたりしていますが、これは本来言語の違いで(ステッキ:Stick英語・ストック:Stock独語)そう呼び分けているのは日本だけです。T字を2本持っている人がペアで用いたり、あるいは2本のI字の1本だけを使ったり、必ずしもグリップ形状でそう使わなければいけない、というものでもありません。

 まずは、通常1本で用いるTグリップタイプのものから説明しましょう。

 基本的にT字グリップは、Tの横棒部分を上から握る形で使うように作られています。最近は、Tの縦棒部分にもグリップをつけて、縦横両方で使える「ダブルグリップ」のものがほとんどです。

画像 この縦グリップ、横グリップの使い分けは、一般的に登りが縦グリップ、降りが横グリップと言われています。なぜそうなのか?

 実際に握って、地面に突いてみれば分かりますが、縦に握ると手首から先端までの長さが、上から横に握るより、短くなります。登坂では、自分の位置より高いところにポールを突きますから、長いと腕が吊り上げられてしまいます。縦に握っておけば、高めの段差などでも突き立てやすくなるのです。

 

画像 逆に降りの場合は横グリップで握ります。

 降りでは、自分の立ち居地より低い地面を突きますから、少しでも長いほうが助かります。横グリップで握っておけば、腕を伸ばして突き立てやすく、前方に体重をかける際も掌に体を預けやすいわけです。

 この2種類のグリップの使い分けをすれば、ほとんどポールの長さを調整せずに、最適の高さで使うことができます。このT字グリップでの登りと降りの使い分けを最初に覚えておけば、後に2本にした際にも、本来のトレッキングポールの威力を発揮しやすいです。

 実は、2本ペアのI字グリップは、T字のように握り位置で状況を対応できません。登りと降りで、その長さを調整する必要があります。しかも降りの際に、T字の横グリップのように、掌に体重を預けることができません。いきなり2本のI字グリップを手にした初心者は、これをうまく使いこなすことができないでしょう。実際、登山で2本を用いている方はとても多いですが、残念ながら使いこなしている方は少ないようです。Iグリップは少々慣れが必要ですね。

 そう考えると、まずはT字グリップを、1本でうまく使いこなせるように練習すると、良いのではないかと私は思います。私も最初は、T字1本から登山を始めました。そのうち同じT字をもう一本買い足し、それでダブルポールの練習をしました。その後、I字グリップのLEKIを購入したのですが、やっぱりI字をT字と同じように使いこなすのは難しかったです。特に降りですね。

 T字であれば、横グリップで簡単に、体重を預けて前に突くことができます。これがI字になると、体重を預けて前に突くのが俄然難しくなります。I字グリップを有効に使うには、ポールを最適の長さに調整することと、ストラップの使い方をマスターすることの2つが大切です。これを練習しておかないと、何の役にも立たないただの棒になってしまいます。

画像 I字グリップのストラップの使い方をマスターしましょう。まず、ストラップの輪っかの下側から手首を通します。間違いの多くは、これを上から通しているだけの握り方です。下から通すことで、手の甲の部分にストラップが来ます。そしてストラップの付け根部分が、掌の中に納まるようになります。

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 手の甲にストラップを当てたら、そのままストラップの付け根部分を包み込むように、グリップを握ります。こうすると、手に体重がかかるとストラップが自然に締め付けられ、掌から甲全体を包み込むように、体重を乗せることができます。

 間違ったストラップの使い方ですと、大抵手首を通しているだけで体重が乗せられないか、乗せていても不安定な握り方になっています。この正しいストラップの通し方をぜひ覚えてから、I字グリップを使いましょう。そうでないと、宝の持ち腐れどころか、不安定なポールによって転倒し、怪我をするかもしれません。

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 さて、握り方をマスターしたら、今度は突き方です。2本であっても、基本的にT字と同じです。登りの際は、前足付近に突き、体重を軽く預けて後ろに押します。

 大きな段差などでは、足より先に突いて、上半身を預けて前足をサポートします。その際2本であれば、はしごに登るように簡単に体を前足に乗せることができます。

 この「はしごに登るように」使えるのが、2本ポールの最大の利点ですね。

 数十センチにもなるような、高い段差を乗り越えるときなどは、ポールが長すぎてバンザイ状態になってしまいます。そういう時はストラップを外して、グリップの少し下で握り直すと、バンザイになりません。これはT字グリップでも同様ですね。

 ストラップにきちんと手が収まっていれば、T字グリップよりもしっかり体重を乗せられるはずです。しかも2本ですから、有効に使えば1本のT字よりはるかに効率のいい、登板ができるといえます。

画像さて、いよいよ下山です。これも基本的な使い方は、T字と全く同じです。Tでは前方に体重を預けるように使いましたが、I字でもそれと同じように、前足よりも前に突きます。それにより、足特に膝にかかる体重や強い衝撃を、手や上半身に分散できます。つまり、下山で壊しやすい膝を守ることができるわけです。

 大きな段差を降りる際は、2本を段差の下に突き立てます。両手のストラップに体重を預けたら、屈みながら片足を下ろします。これは登りで「はしごを登るように」と喩えたのと同様、「はしごを降りる」ようなイメージです。

 1本のT字では、体重を乗せることはできても、さすがにはしごのようにはなりません。T字で大きな段差を降りる際は、いわばカニ歩きのように、横に足を踏み出す形に近くなります。それが2本であれば、無理のない自然体で降りることができます。

 下山の際には、ポールの長さが必要になりますが、T字で握り方を変えたのと同じ応用が、実はI字グリップでもできます。それは、I字の頭の部分を、上から包み込むように握る方法です。

 一時的に大きな段差を降りる際など、長さを変えていると面倒です。上からグリップを握りしめれば、その分長さが稼げます。T字と同じように、掌に体重をかけることもできます。一般的なI字グリップであれば、上から包み込めるグリップ形状になっています。そうした応用ができるかどうかは、実はTグリップが使いこなせていれば、何も考えずにできるはずです。

 逆に言えば、Iグリップでそれをいきなりやるのは、ちょっと怖いかもしれません。そういう意味でもIグリップは難易度が高いでしょう。

 最後に、IにしてもTにしても、トレッキングポールが万能ではないことを、肝に銘じておいて下さい。手を使う必要のある急な岩場、鎖場、はしごなど、ポールを収納する場面は必ずあります。その際は、あせらず面倒がらず、収納しましょう。2本ポールの簡単な収納方法は、2つのストラップをカラビナで繋ぎ、首からかけておく方法です。ブラブラしないように、ザックのストラップに挟み込んでおけば、それで手を使うこともある程度可能です。しかしもし邪魔になりそうなら、無理せずザックに収納して下さいね。

 さて次回は、紫外線と虫です。

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 岐神葵のぼうけんのしょ。

 岐神葵のブログらしいです。
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 架空の人物の閉じた世界のありえない話なんかより、何百倍も面白いリアル体験。そんな人生を目標に、意味不明な挑戦と挫折を繰り返しています。

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